平成20年2月28日付で、国税庁より「逓増定期保険に係る保険料」についての法令解釈通達の改正が公表されました。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/kaisei/080228/01.htm
今回は、逓増定期保険について簡単に説明します。
逓増定期保険とは、保険期間(何歳から何歳まで)のある生命保険の一種です。
保険期間において、契約者が支払う保険料は一定なのに、死亡などが発生したときに支払われる保険金の額が年々増加するという保険です。
この保険は法人で加入することが圧倒的に多いのですが、それには理由があります。
結論から言いますと、以前は法人の節税商品として宣伝されていたからなのです。
通常の定期保険でも、保険を中途で解約したときに戻ってくる解約返戻金がありますが、逓増定期保険の場合は、先々の保険金が増える設計になっていますので、解約返戻金の率がより高くなっているのです。
以前の税法の法令解釈通達によりますと、加入時の年齢や保険期間を工夫すれば、支払った保険料の全額を損金処理(費用処理)することができましたので、支払保険料に法人税率(約42%)を乗じた法人税減少額は、実質的に保険料の負担がないとの宣伝がなされていました。
例えば、保険期間10年の逓増定期保険(年間の保険料が20万円で、5年経過時の単純返戻率が60%)について
保険料累計 100万円(20万円×5年)
法人税節税 42万円(20万円×42%×5年)
実質保険料 58万円(100万円-42万円)
解約返戻金 60万円(100万円×60%)
と宣伝していたのです。
つまり、単純返戻率は60%にもかかわらず、解約返戻金を実質保険料で除した実質返戻率は100%を超えていますよと宣伝していたのです。
私は、このような考え方には致命的な欠陥があると考えています。
(理由その1)
利益あっての節税であり、3年から5年先までの利益を確実に見込める場合を除き、将来の節税額というのは机上の空論だと思うからです。
また、逓増定期保険の場合、1年目や2年目の解約返戻率は著しく低いことが多く、その時点で解約せざるを得ない場合には、大きな損失となる場合があります。
(理由その2)
保険を解約し、解約返戻金を受け取ったときには、解約返戻金に法人税率を乗じた税額が発生しますが、それを考慮していない点も不合理です。
解約時点で、解約返戻金に見合う額の役員退職金が発生すれば、上記法人税額は発生しないとの見方もありますが、これもナンセンスです。
役員の退職金というものは、仮に役員退職金規程があっても、退職時の法人の状況により金額だけでなく支給の有無まで左右されることが多く、法人所得の減算項目として想定すべきではないのです。
従業員の退職金とは性格が全く違うのです。
私は、保険は保障が必要な場合にのみ活用すべきと思います。
税理士法人信和綜合会計事務所(大阪の税理士・公認会計士)
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