先週の12月17日に国税庁より「役員給与に関するQ&A」が公表されています。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf
平成18年の税制改正において、役員給与に関する規制が強化され、原則として定時株主総会以外のタイミングで役員給与の改定をすることができなくなりました。
(会社法上は、臨時株主総会などで決議があれば役員給与を改定することは可能なのですが、税務上は損金として認められない金額が発生するということです。)
ただし、この例外として、「臨時改定事由」と「業績悪化改定事由」に該当する場合は、定時総会以外のタイミングで役員給与を変更することが認められています。
「臨時改定事由」は、役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更があった場合とされており、「業績悪化改定事由」は、経営の状況が著しく悪化した場合とされています、
このうち、「臨時改定事由」については、代表者の病気や逝去により代表取締役が交代した場合など、比較的イメージしやすいかと思いますが、「業績悪化改定事由」については、どの程度の業績悪化が該当するのかについて、以前より疑問がありました。
というのは、これまでに公表されている通達などでは、一時的に資金繰りが悪化した場合や単に業績目標に達しなかった場合は「業績悪化改定事由」に該当しないとしか記載されていなかったからです。
今回公表された「役員給与に関するQ&A」では、「業績悪化改定事由」に該当する具体的事例として以下の3つを列挙しています。
①株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
②取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
全然ダメですね。
役員給与を減額できるのはどういう場合かを示しているはずなのに、その例示の中で「役員給与の額を減額せざるを得ない場合」と書かれても困ります。
私なりに解釈しますと、「株主や債権者などの第三者に対して、経営責任をとらざるを得ないレベルの業績の悪化」ということではないかと思いますが、抽象的な表現の域を出ません。
例えば、経営責任により大幅な役員給与の減額を行った結果、最終的に会社が僅かな利益(黒字)を計上した場合などは、どのように考えるべきなのでしょうか?
同じ状況で、役員給与を50%減額して会社が利益(黒字)を計上した場合と、役員給与を30%減額して会社が損失(赤字)を計上した場合で、取り扱いが異なるのも奇妙な気がします。
ということは、役員給与を減額した程度では赤字を解消できないレベルの業績悪化でないと「業績悪化改定事由」に該当しないということなのでしょうか?
残念ながら、今の段階では疑問は尽きません。
信和綜合会計事務所(大阪の税理士法人)
http://www.shinwa-ac.net/
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