私は公認会計士資格を取得後、4年間在籍した監査法人を退職し、平成8年に26歳で独立開業しました。
独立開業といっても格好の良いものではありませんでした。
事務所は住居兼用の賃貸のワンルームマンション。
机と椅子以外の備品はファクス兼用の家庭用電話とパソコンのみ。
お客様はゼロ。つまり、収入もゼロ。
時間は売りたいほど余っている状態。
本当に惨めなものでした。
開業後の数ヶ月間は全く収入がなく、監査法人時代に貯めた預金も恐ろしい勢いで減っていきました。
ある程度の予想はしていましたが、26歳の世間知らずの若造と顧問契約をしていただくのは非常に難しいことでした。
このまま行けばすぐに預金がゼロになるという不安。
お客様を1件も獲得できないのではないかという焦り。
どうすれば状況を打開できるのか見当もつかないという悩み。
それらは私を食欲不振にさせ、激ヤセ(10キロ以上)させるのに充分でした。
そんな不安定な状態が1年ほど続きました。
生活資金を捻出するために、税務ソフトの開発会社の日当仕事もやりました。
それだけではなく、やらないと決めていた監査法人の日当仕事にまで手を出していました。
「独立開業したにもかかわらず、日当仕事で生計を立てる」
これは屈辱的な状態です。
何のために監査法人を辞めたのか?という自問自答の日々が続きました。
しかし、生活のためには「日当仕事」を辞めたくても辞められなかったのです。
1年後、数件のお客様を獲得し、ある程度の収入が見込めるようになった時、私は「日当仕事」を卒業しました。
生活は一時的に苦しくなりましたが、自分の仕事をしているという意識が強くなり、大きなやりがいを感じるようになりました。
少ないお客様のために一生懸命に仕事をしてきたことも大きかったと思いますが、その頃から、お客様や知人からの紹介が1件、2件と増えてきました。
当時の喜びと感謝の気持ちは今でも忘れることはありません。
また、その過程において、多くの人との出会いがありました。
その信頼関係こそ、現在の私の唯一の財産といっても過言ではありません。
これからも、さらに多くの方との信頼関係を築けますように、精一杯努力していきたいと思います。
(Episode 9)
信和綜合会計事務所(大阪市中央区の税理士法人)
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