実際の相続税申告業務や相続発生前の事前対策業務などを行っているときに、出てきた預金通帳や定期預金証書を見て、「この預金は子や孫の名義なので、相続税には関係ない。」と言われることがあります。
しかし、残念ながら、この考えは間違っています。
なぜなら、これが認められれば、預金しか財産のない人は、預金の名義変更により相続財産を減らすことができ、実質的に相続税が課税されなくなるという不合理が生じるからです。
資産を子や孫に遺してあげたいという熱い気持ちはよく理解できるのですが、相続税の税務調査では、これらの預金は「名義預金」として申告漏れの指摘を受ける可能性があります。
名義預金とは、口座名義人に名義を借りている預金のことをいい、税務上は、実質所有者の預金として扱われます。
それでは、どのような預金が名義預金と認定されるのでしょうか?
具体的には、
①名義人がその預金の存在を知らない場合
②通帳・証書・カード・印鑑などを親が保管している場合
③その預金の銀行届出印が親の銀行印と同一である場合
④名義人は遠隔地に住んでいるにもかかわらず、親の住所近辺の銀行(支店)で口座を開設している場合
⑤④の場合で、入出金が親の住所近辺の銀行(支店)でしかなされていない場合
⑥預金利息を親の口座に入金している場合
⑦贈与税の申告をしていない場合
などが該当すると考えられます。
逆に、名義預金と認定されないためには、以下の方式によることが無難です。
①「あげる」・「もらう」の意思表示を確認したうえで、贈与契約書を作成する。
②預金の贈与をする場合は、もらう人の日常管理している口座に振り込み、定期預金への振替等はもらう人が行う。
③贈与税が発生する場合(110万円超の贈与)は、贈与税の申告を行う。
信和綜合会計事務所(大阪市中央区の税理士事務所)
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