社長「今期は利益が結構出そうだな。」
原「この調子だと税引前利益は500万円くらいになりそうです。」
社長「税金を払うくらいなら従業員に賞与を出そうかな?」
原「賞与を出せば確かに税金は減りますが、会社の資金はもっと減ります。」
社長「えっ?」
原「税金が減る以上に税引前利益が減るので、会社の資金は確実に減ります。」
社長「それじゃ賞与はやめたほうがいいの?」
原「いえ、従業員のモチベーションを向上させることが必要なら、社長がご判断ください。」
社長「うーん。」
中小企業では結構よくある会話ですが、具体的な数値で考えると明らかです。
決算賞与を100万円とし、実効税率を25%とします。
<決算賞与を支給しない場合>
税引前利益:500万円
法人税等:125万円(500万円×25%)
税引後利益:375万円(税引前利益-法人税等)
<決算賞与を支給する場合>
税引前利益:400万円(500万円-決算賞与100万円)
法人税等:100万円(400万円×25%)
税引後利益:300万円(税引前利益-法人税等)
この設例の場合、税引前利益が100万円減少したにもかかわらず、法人税の減少は25万円にとどまったため、税引後利益は75万円の減少となっています。
つまり、決算賞与を支給しない場合と比べて75万円の資金が会社から流出することになります。
節税したつもりが会社の資金を減らしたのでは本末転倒です。
しかし、私は決算賞与を支給すべきではないと言っているのではありません。
「節税のために決算賞与を支給する」という考え方が間違っていると言っているだけです。
考え方を変えれば、75万円の資金負担で従業員に100万円の賞与を支給することができるということです。
それにより、従業員のモチベーションが上がるのであれば、会社にとって大きなプラスになるかもしれません。
決算賞与の支給の可否は、経営上のプラスとマイナスを十分考慮して判断すべきものと思います。
ところで、決算賞与を支給する場合には、留意すべき事項があります。
期末日までに決算賞与を支給した場合には問題なく損金算入となりますが、期末日までに支給しなかった場合でも以下のすべての要件を満たせば損金算入が認められます。
・支給を受けるすべての従業員に対して、期末日までに各人別に支給額を通知している。
・期末日から1ケ月以内に、通知したすべての従業員に支給している。
・決算において、未払計上により損金経理をしている。
なお、期末日から支給日までの間に退職した従業員に通知額を支給しなかったり、就業規則で支給日に在籍する従業員だけに賞与を支給することと規定している場合は、損金算入が認められないことになっています。