何年か前、税務調査の準備をしているときに、こんなやりとりがありました。
原:「役員給与の改定の根拠となる議事録を見せてください」
K部長:「はい、これです」
原:「株主総会で取締役・監査役それぞれ限度額を定められているようですね」
K部長:「はい、当社は昔からそうしています」
原:「役員個別の配分は取締役会に一任となっていますが、監査役の報酬も取締役会で決定しているのですか?」
K部長:「そうですよ。社長に全部決めてもらっています。」
原:「取締役の報酬はともかく、監査役の報酬の決定については問題がありますよ!」
K部長:「そうなんですか?」
会社法では、取締役の報酬は、定款に定めていないときは、株主総会の決議により決定されることになっています。
定款に定めのある会社はほとんどないと思いますので、以下のいずれかの方法により決定されることになります。
・株主総会で各取締役の報酬を個別に決定する。
・株主総会では報酬限度額を決定しておき、個別の配分は取締役会または代表取締役に一任する。
監査役の報酬についても、定款に定めていないときは、株主総会の決議により決定されることになっています。
取締役報酬と同様に、理論上は、以下のいずれかの方法により決定されることになります。
・株主総会で各監査役の報酬を個別に決定する。
・株主総会では報酬限度額を決定しておき、個別の配分は監査役の協議で決定する。
形式的ではありますが、監査役は取締役の業務執行を監督する立場にあり、会社法ではコーポレートガバナンスの観点から、監査役報酬の決定権限は取締役に与えないこととしているようです。
つまり、監査役の報酬については、取締役会や代表取締役に一任することはできないということです。
昭和の時代(昭和56年以前)は全く問題はなかったようですが、現行の会社法の下では、そのような記載のある株主総会議事録には問題があるということになります。
実務上は、以下の理由により、株主総会で監査役の報酬を個別に決定し、株主総会議事録に記録を残しているケースが多いのではないかと思います。
・オーナー企業の場合、オーナーがすべての役員の報酬を決定しているという実態が否めない。
・中小企業の場合、監査役は1人のことが多く、会議の記録である「議事録」を作成しにくい。
つまらぬことで足を掬われることのないようにしたいものです。
税理士法人信和綜合会計事務所(大阪市中央区)
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