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本当に東芝だけなのか?

日本を代表する会社のひとつである「東芝」が揺れています。
世間では「不適切会計」という用語が使われていますが、代表者の指示もあったようですので、私は完全に「粉飾決算」だと思います。
日本公認会計士協会によると、厳密には「不適切会計」と「粉飾決算」には違いがあるそうですが、そんなことはどうでもよいことです。

現時点で判明しているだけでも、結果として累計3000億円を超える利益が過年度において過大計上されていたようですので、粉飾額は過去最大になる可能性があります。
(ちなみに、過去最大の粉飾額は、破綻した日本長期信用銀行の約3100億円といわれています。)
それ故、株式市場だけでなく、社会全体に与える影響は計り知れないものがあります。

粉飾額は3000億円で終わるのか?
それだけでなく、私は
粉飾しているのは本当に東芝だけなのか?という不安を払拭できません。
粉飾の指示をした同社の代表者は当然退任することになると思いますが、様々な社会的責任が追及されることになるかと思います。

また、デタラメな財務諸表に「適正意見」を表明し続けてきた監査法人にも大きな責任があります。
マスコミ報道では、2012年頃に同社の社外取締役が業績回復の不自然さを指摘していたそうですが、監査法人はそれに気づかなかったのでしょうか?
仮に、気づいていたのに指摘しなかったのであれば、救いようがありません。
逆に、本当に気づかなかったというのであれば、結果として監査人としての役割を果たせなかったことになります。
残念なことですが、監査人の能力に問題があったといわれても仕方がありません。

監査が難しいものであることは、私はよく分かっているつもりです。
特に、現在の会計基準が異常なレベルまで将来の予測や見積もりに影響されるものであり、検証が難しいことも。
そして、伝統的に、会社が本気で隠したものを見つけることは困難であることも。
さらに、監査報酬をいただいているにもかかわらず、会社とは独立性を保持しなければならないことも。
私には荷が重い。
それ故、私は公認会計士ではありますが、20年前から財務諸表監査には関わらないことにしたのです。

財務諸表監査を引き受ける以上は、監査人に結果責任が伴います。
監査法人は訴訟で負けないことを重視するあまり、「監査手続」を実施した過程を残すことを行動原理にしている節があります。
「監査手続」は重大な不正や誤謬がないことを確かめるための手続であって、それ自体が目的ではないのに。
定められた「監査手続」を実施しただけで、財務諸表に重大な不正や誤謬がないことを証明できるのか?を真剣に考えてほしいです。

訴訟で負けなかったとしても、社会からの信頼を失ってしまえば、あっという間に監査制度など崩壊してしまうことを、監査法人は意識しなければなりません。
同社を担当していた監査法人だけでなく、他の監査法人も襟を正す必要があります。
「明日は我が身」ですから。

(追記)
第三者委員会によると、粉飾額は1562億円とのことです。
お詫びして訂正します。

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監査法人の変更

3月決算法人の株主総会(6月下旬)が近づいています。
今年も多くの上場会社が監査法人を変更することになるのでしょう。

具体的な統計データに基づいて書いているわけではありませんが、近年、頻繁に聞こえてくるようになりました。
時代の流れを感じますが、10年以上前は監査法人の変更などほとんどなかった様な気がします。
当時は、私も含めて多くの人は、監査法人の変更があれば、「その会社に何か問題でもあったのか?」と疑っていたのではないでしょうか?

ところで、監査法人の変更の理由としては、表向きには「任期満了のため」としているケースが多いように思います。
でも、実際のところどうなんでしょうか?
・内部統制や会計処理に関する意見の相違
・監査法人のレベルが低すぎる
・相性が合わない
など、いろいろと大人の事情があるのかもしれません。

しかし、中には監査報酬の値引競争による変更もあるのではないかと思います。
一般に、監査報酬は監査日数×報酬単価で見積もられることが多いのですが、そのような監査法人はおそらく監査日数で調整しているのでしょう。
そうでなくとも、日本の監査は欧米と比べて監査日数が少ないと言われているのに。。。
それ以前に、そういう手法で監査契約を結んだ会社との間に、「特別な利害関係はない。」とどうして言えるのでしょうか?


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監査される監査法人

過年度において、粉飾した財務諸表に適正意見を表明した監査法人。
粉飾が判明した後に、訂正した財務諸表にも適正意見を表明する同じ監査法人。

厚顔無恥といわれても仕方のないような全くお粗末な話です。
まずは自分が過去に発行した監査報告書に不適正意見を表明することが先ではないかと思います。

金融庁は、オリンパス問題であずさ監査法人・新日本監査法人を調査しており、大王製紙問題で監査法人トーマツも調査することを発表しました。
これは、我が国のビッグスリーといわれる大手監査法人がすべて調査の対象となったということです。
今回の調査により我が国の監査制度が崩壊するような処分がなされるとは思えませんが、責任の所在だけははっきりさせる必要があります。
トカゲの尻尾切りのようになりそうですが。。。

残念ながら、監査される側から報酬(お金)をもらって監査をするという制度上の致命的な問題点の解決は見込めませんので、同じような問題は繰り返されるでしょう。
忸怩たる思いではありますが、金融庁の調査結果を見守るしかありません。


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21年目の秋

10月も最後の日となりました。
数日前にまた一つ年を取り、42歳になりました。
早いもので、平成3年に公認会計士二次試験に合格してから丸20年が経過したことになります。

公認会計士の本来業務は「監査」なのですが、監査業界もこの20年で大きく変わりました。
平成3年当時では全く予想もできなかったことばかりです。
・監査法人の創業世代、第二世代の公認会計士の引退
・不適切な監査による懲戒処分の増加
・監査法人に対する訴訟の増加
・監査の厳格化という名の形式化
・監査法人の業績の悪化
・試験合格者の未就職問題

数え上げればキリがありませんが、監査業界をとりまく近年の状況には本当に厳しいものがあります。
私は10年以上前から「監査」とは一定の距離を置いていますので、偉そうなことを言える立場にはありませんが、監査に携わる公認会計士には踏ん張ってもらいたいです。

残念ながら、監査業界の一部には問題を起こした監査法人や公認会計士を吊し上げようとする傾向があります。
特に、インターネット上の無責任な意見にはうんざりします。
他の監査法人のことを批判したり馬鹿にしたりする前に、まずは自分の襟を正すことが先ではないかと思います。


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ガバナンス

大王製紙は元代表取締役個人に対して、子会社等を介して100億円を超える資金を貸し付けていたようです。
報道などで連日騒がれていますが、そんな上場会社があるとは思いもよりませんでした。
「役員に対する使途不明の貸付金」など、中小企業でも望ましいものではありません。

しかし、巨額の資金の使途について、他の取締役や監査役が本当に知らなかったなどということはあり得るのでしょうか?
平成23年3月期の有価証券報告書の関連当事者情報に、元代表取締役に対し2,350百万円の貸付があると記載されているのに。。。
ひょっとすると役員であっても訊いてはいけない雰囲気だったのかもしれません。

もう一つのガバナンス(企業統治)の砦が公認会計士による外部監査です。
同社の外部監査を担当しているのは『世界品質』を唱える監査法人ですので、監査上は問題がなかったという結論に恐らく間違いはないのでしょう。
いや、間違いでなかったことを祈ります。

最後に一句。
ガバナンス 築くも壊すも 経営者


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大監査法人のリストラ

某大監査法人が大規模な希望退職を募っているようです。
監査法人を離れて15年以上経過する私にはピンときませんが、伝え聞いたところでは400人規模のリストラだそうです。

以前では考えられない事態ですが、それほど監査法人の収益性が低下しているということなのでしょう。
その原因は意外に単純です。
数年前は内部統制(J-SOX)業務に関する監査法人への需要が高く、どの大監査法人も年間数百人単位の採用を行っていました。
しかし、J-SOX特需は長く続くことはなく、その代替業務を獲得することも順調にいかず、昨年頃から人員過剰となっていたようです。

J-SOX特需は長続きしないということは誰もが認識しているのに、どうしてそんなに人員を増やすのか?
需要があるからといって監査報酬を極端に増額提示することには無理があるのでは?
そんな危惧の声は当時にも上がっていましたが、すべては後の祭りです。

まさに「栄枯盛衰」を感じます。
やはり、現在は油断するとすぐに淘汰されてしまう時代なのでしょう。
そんな時代だからこそブレることなく堂々と生きたいものですが、どうしても自分の立ち位置や向きがこれでよいのかと気になってしまいます。
そんな漠然とした不安を抱えてしまうのが日本人の弱いところなのかもしれません。


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あきれた粉飾決算

半導体製造装置メーカーのエフオーアイ(以下、F社)が破産の申立をしたようです。

F社は昨年11月に東証マザーズに上場した会社ですが、巨額の粉飾決算が発覚し、上場廃止が決定していました。
報道によりますと、前期の連結売上高118億円のうち、約100億円が架空取引だったそうです。
売上の水増しなどという表現がよく使われますが、ここまでくるとそのような表現は不適切かと思います。
売上の大半が「ウソ」なのですから。
あまりにも酷い内容です。

当然のことですが、F社は上場会社ですので、監査法人または公認会計士による監査を受けています。
経営陣に最も大きな責任があることは明白ですが、今回の場合は、監査を担当した彼らにも大きな責任があると思います。
・年商の2倍以上の売掛金残高(主に、海外向け)
・原価項目の年次推移(特に、変動費項目)
などについて、残高確認や比率分析を適切に実施していれば気づくはずだと思うからです。
もし、気づいていて見逃したということであれば、救いようがありません。
同じ公認会計士として、そうでないことを祈るばかりです。

F社の場合、大監査法人以外の個人の公認会計士が共同で監査を行っていたようです。
大監査法人以外の場合、その監査会社からの報酬が収入のそれなりの割合を占めているという現実があり、独立性が保持されていたかも問題となる可能性があります。
私は大監査法人がエラいなどとは決して思っていませんが、監査の品質管理が不十分といわれている中小監査法人や個人の公認会計士には襟を正してほしいと思います。
それができなければ、監査業務から撤退すべきです。


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土曜ドラマ「監査法人」

NHKの土曜ドラマ「監査法人」が先週よりスタートしています。
私は「大河ドラマ」と「その時歴史が動いた」を除いて、NHKの番組は基本的には見ないのですが、このドラマにはハマってしまいそうです。
おそらく、初めて公認会計士にスポットを当てたドラマではないかと思います。

実は、以前からずっと残念に思っていました。
医師や弁護士を主人公にするドラマはたくさんあるのに、どうして公認会計士を主人公にしたドラマがないのかと。
やはり、話題が専門的になってしまう点と地味な仕事のイメージがドラマには向かなかったのでしょう。
今回のドラマは、そういう意味でもかなりの意欲作です。

第一回目を見た感想ですが、細かい場面設定などについて言いたいことはたくさんあります。
「主査なのに期末監査で初めて会社を訪問するわけないだろ!」
「期末監査のときに、現場視察をしても手遅れだろ!」
まさに「突っ込みどころ」が満載ですが、そういうことを書き始めると長くなるので差し控えます。

ただ、これだけは言っておかねばなりません。
ドラマでは、多少の粉飾には目をつぶる「ぬるま湯監査派」と一切の粉飾を認めない「厳格監査派」の対立が描かれています。
さらに、古い会計士が「ぬるま湯監査派」で、新しい会計士が「厳格監査派」であるかのように区分されていますが、これでは視聴者の方に大きな誤解を与えるのではないかと思います。
当然のことながら、古い会計士の中にも「厳格監査派」である人は多くいますし、新しい会計士の中にも「ぬるま湯監査派」に近い人もいるかもしれないのです。

古い会計士の方の名誉のために言いましょう。
私が上場会社の監査に携わっていたのは15年ほど前のことですが、私が直接知り得る限り、粉飾とわかっていながら目をつぶるような会計士はいませんでした。
残念なことに、私が開業前に所属していた監査法人の東京事務所では、粉飾に加担した「ぬるま湯監査派」の会計士が複数逮捕され、法人自体も昨年解散しました。
しかし、所属していた会計士がすべて「ぬるま湯監査派」では決してありません。
大半の方が「厳格監査派」なのです。

ドラマの詳細はこちら↓
http://www.nhk.or.jp/dodra/kansahoujin/index.html


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公認会計士試験

昨日5/25に、平成20年度公認会計士試験の短答式試験が行われました。
最近の試験では、1次試験・2次試験・3次試験の区分がなくなった代わりに、短答式試験の合格者が論文式試験に挑戦できる仕組みとなっているようです。

私も平成3年の公認会計士試験2次試験を受験しましたが、かなり昔のことになってしまいました。
クーラーのない蒸し暑い会場(確か、大阪経済大学)で受験し、答案用紙に汗がにじんだ事を記憶しています。
当時は短答式試験はなく、いきなり論文式の試験でしたので、完全に一発勝負でした。
そういうこともあり、人生を賭けて臨む受験者の中には、悲壮感が漂う人もいました。
まさに「ガチンコ勝負」でした。

現在の試験制度では、合格者を増やすことが目的とされており、合格率もかなり高くなってきています。
聞くところのよりますと、2018年頃までに公認会計士を現在の約2倍の5万人にする計画だそうです。

監査が必要となる領域は年々増加しており、業務の範囲も広がっていますので、私は公認会計士の数を増やすことには賛成です。
しかし、それは母体である受験者数を増やすことによって達成するべき課題であり、合格率を上げることで解決するべきではないと考えています。


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難しい監査業界

金融庁は近いうちに、公認会計士法の改正案を国会に提出するそうです。
改正案の具体的な内容に関しては、以下のようなものですが、主に監査法人制度の規制を強化するものになっているようです。
①社員資格の非公認会計士への拡大
②情報開示
③課徴金制度の導入
④関与先グループへの就職制限の拡大
今回の改正は、頻発する監査不祥事を受けての対応と思われますが、私は余計に証券市場の混乱をもたらすのではないかと危惧しています。
規制強化がこのまま進めば、私のように監査は一切やらない公認会計士が増えると考えられます。
そうなると、監査リスクが高いと判断された会社は、誰も監査を引き受けないということも想定されるのです。
現に、中小の監査法人の中には、法定監査業務からの撤退を考えている法人もあるとのことです。
推測ですが、新日本・あずさ・トーマツ(3大監査法人)も、本音ベースでは、監査に固執していないのではないでしょうか?
このような状況の下で、法改正により、本当に証券市場の安定化が図られるのかは大いに疑問です。

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