T 目から鱗の決算書(設例編)
※目から鱗(うろこ)とは、あることがきっかけとなって、迷いからさめたり、物事の実態がわかるようになること。
1月
とある会社の1年間です。
まずは、カルロス社長と一緒に決算書の流れについて見ていきましょう。
1.カルロス社長 「1月1日に資本金1,000円で会社を設立しました。これからバリバリ頑張りま〜す!!」
小路税理士 「顧問税理士になりました小路です。よろしくお願いいたします!」
現金及び預金= 1,000円
2月
2.カルロス社長 「毎月100円で店舗を借りることにしよう」
3.カルロス社長 「これからは、毎月商品A(原価@100)を現金で10個仕入れることにしよう」
「売れるように考えていかなくちゃな!」
4.カルロス社長 「やった〜!商品A(売価@200)はヒット商品になり、すぐに売り切れたぞ」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
|
売 上 高 |
= |
商品A販売10個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売10個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(2,000円)−費用(1,100円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(0円)+当期純利益(900円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(1,000円)+売上高(2,000円)−仕入高(1,000円)−地代家賃(100円)
|
3月
5.小路税理士 「事業も軌道にのってきましたので、役員給与をとられたらいかがですか?」
カルロス社長 「毎月500円もらうことにします」(注1)
小路税理士 「税金面で不利になりますので、次の株主総会まで金額を変えないでくださいね」
カルロス社長 「わかりました」
6.カルロス社長 「人を雇うことにしよう。選考の結果、クリステルを毎月300円で雇うことにしたぞ」
クリステル 「カルロス社長、よろしくお願いします!」
カルロス社長 「こちらこそヨロシク!」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
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売 上 高 |
= |
商品A販売10個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売10個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(2,000円)−費用(1,900円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(900円)+当期純利益(100円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(1,900円)+売上高(2,000円)−仕入高(1,000円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)
|
(注1)厳密には、株主総会決議が必要となります。
4月
7.カルロス社長 「試しに商品B(原価@400)を現金で5個仕入れてみることにしよう」
クリステル 「そうですね!さっそく仕入れて様子をみましょう」
8.カルロス社長 「ややっ!商品B(売価@600)は、1個しか売れず、4個も売れ残ってしまった!」
クリステル 「商品Bはなかなか売れそうにないので、今回限りで仕入れをストップしましょう」
カルロス社長 「わかった、そうしよう」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
●商品B販売個数 1個 (売れ残り4個)
|
売 上 高 |
= |
(商品A販売10個×売価@200)+(商品B販売1個×売価@600) |
|
売 上 原 価 |
= |
(商品A販売10個×原価@100)+(商品B販売1個×原価@400) |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(2,600円)−費用(2,300円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(1,000円)+当期純利益(300円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(2,000円)+売上高(2,600円)−仕入高(3,000円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)
|
5月
9.小路税理士 「売れ残り商品が増えたので、運転資金が不足しそうですね、カルロス社長」
カルロス社長 「そうですね。銀行から1,200円を借り入れることにします」
10.クリステル 「カルロス社長、今月商品Bは、全く売れませんでした」
カルロス社長 「まだまだあきらめずに頑張って行こう!」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
●商品B販売個数 0個 (売れ残り4個)
|
売 上 高 |
= |
商品A販売10個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売10個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(2,000円)−費用(1,900円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(1,300円)+当期純利益(100円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(700円)+売上高(2,000円)+借入金(1,200円)−仕入高(1,000円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)
|
6月
11.カルロス社長 「今月から銀行への返済が始まるな、毎月100円ずつだったな」
12.クリステル 「カルロス社長、今月も商品Bは、全く売れませんでした」
カルロス社長 「う〜ん・・・」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
●商品B販売個数 0個 (売れ残り4個)
|
売 上 高 |
= |
商品A販売10個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売10個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(2,000円)−費用(1,900円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(1,400円)+当期純利益(100円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(2,000円)+売上高(2,000円)−仕入高(1,000円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)
|
7月
13.カルロス社長 「頑張ってくれたので、クリステル君に夏季賞与600円を出すぞ」
クリステル
「カルロス社長、ありがとうございます。今後も頑張ります!」
14.クリステル 「カルロス社長、今月も商品Bは、全く売れませんでした」
小路税理士 「商品Bは品質が低下しつつあります。原価割れとなっても早く処分された方が良いのでは?」
カルロス社長 「残念ですが、仕方がありませんね・・・」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
●商品B販売個数 0個 (売れ残り4個)
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売 上 高 |
= |
商品A販売10個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売10個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(2,000円)−費用(2,500円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(1,500円)+当期純利益(△500円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(2,000円)+売上高(2,000円)−仕入高(1,000円)−人件費(1,400円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)
|
8月
15.カルロス社長 「商品B(原価@400)は、全く売れないので、@300(原価割れ)で4個全て売り払うことにしよう」
クリステル 「何とか全部売れました。今後はもっと売れる商品を仕入れていきましょう」
小路税理士 「売れ筋商品を見極めることも重要ですね」
カルロス社長 「そうですね。良い勉強になりました」
●商品A販売個数 10個 (売れ残り0個)
●商品B販売個数 4個 (売れ残り0個)
|
売 上 高 |
= |
(商品A販売10個×売価@200)+(商品B販売4個×売価@300) |
|
売 上 原 価 |
= |
(商品A販売10個×原価@100)+(商品B販売4個×原価@400) |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(3,200円)−費用(3,500円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(1,000円)+当期純利益(△300円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(1,400円)+売上高(3,200円)−仕入高(1,000円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)
|
9月
16.カルロス社長 「商品A(原価@100)の売上が好調なので、今月から仕入を20個にしよう」
クリステル 「そうですね、どんどん売上げていきましょう」
17.クリステル 「商品Aの売れ行きは好調でしたが、さすがに2個売れ残りましたね」
●商品A販売個数 18個 (当月仕入20個−当月売れ残り2個)
|
売 上 高 |
= |
商品A販売18個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売18個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(3,600円)−費用(2,700円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(700円)+当期純利益(900円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(2,600円)+売上高(3,600円)−仕入高(2,000円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)
|
10月
18.小路税理士 「そろそろ、商品代金の支払方法について、仕入先と交渉されてはいかがでしょうか?」
カルロス社長 「そうですね。代金の支払を月末締め翌月末払いとさせてもらうよう交渉をします」
19.クリステル 「商品Aの売れ行きは好調でした。残りは3個です。」
●商品A販売個数 19個 (前月売れ残り2個+当月仕入20個−当月売れ残り3個)
|
売 上 高 |
= |
商品A販売19個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売19個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(3,800円)−費用(2,800円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(1,600円)+当期純利益(1,000円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(3,200円)+売上高(3,800円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)
|
11月
20.カルロス社長 「配達の効率化を計るため、営業用車両3,600円で購入したぞ」
21.小路税理士 「今月から車両の減価償却費を月割りで計上しておきましょう」
22.クリステル 「商品Aの売れ行きは好調で、今月は2個売れ残りました」
●商品A販売個数 21個 (前月売れ残り3個+当月仕入20個−当月売れ残り2個)
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資 産 |
現金及び預金 |
3,600 |
商品 |
200 |
車両運搬具 |
3,550 |
|
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|
|
|
|
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|
|
|
|
|
純資産 |
資本金 |
1,000 |
利益剰余金 |
3,750 |
(内 当期純利益 |
1,150) |
|
|
|
|
|
費 用 |
売上原価 |
2,100 |
人件費 |
800 |
地代家賃 |
100 |
減価償却費 |
50 |
|
|
|
|
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|
|
|
|
|
|
売 上 高 |
= |
商品A販売21個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売21個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(4,200円)−費用(3,050円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(2,600円)+当期純利益(1,150円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(6,000円)
+売上高(4,200円)−人件費(800円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)−車両購入(3,600円)−買掛金支払(2,000円)
|
12月
23.カルロス社長 「頑張ってくれたので、クリステルに冬季賞与900円を出すぞ」
クリステル 「カルロス社長、ありがとうございます。今後もさらに頑張ります!」
24.クリステル 「商品Aの売れ行きは好調で、最終の売れ残りは1個のみでした」
カルロス社長 「来年もこの調子で業績を伸ばしていこう!!」
●商品A販売個数 21個 (前月売れ残り2個+当月仕入20個−当月売れ残り1個)
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資 産 |
現金及び預金 |
3,900 |
商品 |
100 |
車両運搬具 |
3,500 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
純資産 |
資本金 |
1,000 |
利益剰余金 |
4,000 |
(内 当期純利益 |
250) |
|
|
|
|
|
費 用 |
売上原価 |
2,100 |
人件費 |
1,700 |
地代家賃 |
100 |
減価償却費 |
50 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
売 上 高 |
= |
商品A販売21個×売価@200 |
|
売 上 原 価 |
= |
商品A販売21個×原価@100 |
|
当 期 純 利 益 |
= |
収益(4,200円)−費用(3,950円) |
|
利 益 剰 余 金 |
= |
前月残高(3,750円)+当期純利益(250円) |
|
現金及び預金 |
= |
前月残高(3,600円)+売上高(4,200円)−人件費(1,700円)−地代家賃(100円)−借入金返済(100円)−買掛金支払(2,000円)
|
1年
【決算整理前】
25.カルロス社長 「1年間の決算書をまとめてみたらこうなったぞ」
「ん〜・・・この後はどうしたらいいんだろう?」
「そうだ!小路さんに相談しよう!」
小路税理士 「なかなか立派な業績ですね」
カルロス社長 「ありがとうございます!!この後はどうすれば良いのでしょうか?」
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資 産 |
現金及び預金 |
3,900 |
商品 |
100 |
車両運搬具 |
3,500 |
|
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|
|
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|
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|
|
|
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|
純資産 |
資本金 |
1,000 |
利益剰余金 |
4,000 |
(内 当期純利益 |
4,000) |
|
|
|
|
|
費 用 |
売上原価 |
16,900 |
人件費 |
9,500 |
地代家賃 |
1,100 |
減価償却費 |
100 |
|
|
|
|
|
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|
|
|
【決算整理中】
26.小路税理士 「正しい損益計算書と貸借対照表を作成するため、一部調整を加える手続きを
【決算整理】といい、この手続をしていきます」
カルロス社長 「なるほど。具体的にはどのようなことをするのでしょうか?」
小路税理士 「減価償却なども通常は【決算整理】で行われるのですが、貴社の場合、毎月の
処理で全て完了していますので、法人税等の計算結果のみを調整します」
カルロス社長 「法人税!?ですか?」
小路税理士 「はい。法人税というのは、主に法人の利益に対して課せられる税金です。
貴社の場合、当期純利益4,000円×法人税率40%(注2)=1,600円となります」
カルロス社長 「いつまでに支払うのですか?」
小路税理士 「決算日後2ヶ月に税務署に申告書を提出し、納付しなければなりません。
貴社の場合、12月末日が決算ですので、申告書と納付期限は2月末日となります」
(注2)実効税率と若干異なります。
1年
【決算整理後】
27.小路税理士 「以下が法人税等の計算結果を反映した決算書です」
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資 産 |
現金及び預金 |
3,900 |
商品 |
100 |
車両運搬具 |
3,500 |
|
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|
|
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|
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|
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負 債 |
買掛金 |
2,000 |
短期借入金 |
500 |
未払法人税等 |
1,600 |
|
|
純資産 |
資本金 |
1,000 |
利益剰余金 |
2,400 |
(内 当期純利益 |
2,400) |
|
|
|
|
|
費 用 |
売上原価 |
16,900 |
人件費 |
9,500 |
地代家賃 |
1,100 |
減価償却費 |
100 |
法人税等 |
1,600 |
|
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|
|
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U 目から鱗の決算書(様式編)
※上記に個別注記表を加えたものを、会社法では「計算書類」と呼びます。
V 目から鱗の決算書(チェックポイント編)
1.損益計算書 ・ 貸借対照表
@損益計算書と貸借対照表の特徴
●損益計算書
月間・年間など一定 期間の動きを示すもの。
1〜12月の損益計算書( N〜 Y)の合計が、事業年度の損益計算書( Z)となっています。
●貸借対照表
月末・年末など特定 時点の状況を示すもの。
12月末の貸借対照表( L)は事業年度 末の貸借対照表( M)と同じとなっています。
A損益計算書とは
会社の一定 期間の利益(儲け)を計算するもの。
収益(≒収入)から費用(≒支出)を差し引くことにより計算します。
正式な決算書では、利益の発生原因別に区分して計算しています。
B貸借対照表とは
会社の特定 時点での財政状態を示すもの。
C損益計算書と貸借対照表の関係
損益計算書により計算された利益相当額だけ、貸借対照表の純資産の部が前期より増加します。
つまり、損益計算書と貸借対照表は、利益でつながっているのです。
なお、純資産の部の増減を示しているのが、株主資本等変動計算書です。
2.利益と資金収支
設例の4月や11月は、それぞれ300円、1,150円の利益が出ているにも関わらず、
現金及び預金の残高は、前月と比較して、それぞれ1,300円、2,400円も減少しています。
逆に、8月は損失が発生しているにも関わらず、現金及び預金の残高は、前月よりも増加しています。
なぜ、このようなことが発生するのでしょうか?
現金及び預金の増減のことをカ【資金収支】といいますが、以下の算式で求められます。
● 資金収支 = 収入 − 支出
これに対し、利益は、以下の算式により計算されます。
● 利益 = 収益 − 費用
結論から言いますと、収入と収益は似ていますが同一ではなく、また、支出と費用も似ていますが
同一ではないことにより、それらを計算要素とする資金収支と利益は、相違するのです。
つまり、資金収支と利益の相違は、収入≒収益(収入≠収益)、支出≒費用(支出≠費用)を原因とするのです。
具体的には、「収入と収益」、「支出と費用」 には以下の相違があります。
収入≠収益
イ 収入はないが、収益となるもの
◆掛による売上(売掛金の増加)・・・売上(収益)は発生しているが未収入
など
ロ 収入はあるが、収益とならないもの
◆売掛金の入金(売掛金の減少)・・・過去の売上(収益)に対する入金
◆借入による資金調達(借入金の増加)・・・収入はあるが、利益(儲け)の計算には無関係
など
支出≠費用
ハ 支出はないが、費用となるもの
◆掛による仕入(買掛金の増加)・・・仕入(費用)は発生しているが未支出
など
ニ 支出はあるが、費用とならないもの
◆買掛金の支払(買掛金の減少)・・・過去の仕入(費用)に対する支払
◆借入金の返済(借入金の減少)・・・支出はあるが、利益(儲け)の計算には無関係
など
これらを踏まえて、4月・8月・11月を見てみましょう。
4月 商品Bの代金の支出はあったのですが、まだ売れていない分については、売上原価 (費用)と
なっていないことが原因です。
不良在庫の増加により、資金収支が悪化した状態です。 上記ニに該当します。
8月 商品Bの処分により、取得原価相当額の売上原価(費用)が発生したのですが、支出は完了して
いることが原因です。
不良在庫の処分により、資金収支が改善した状態です。 上記ハに該当します。
11月 車両の購入という大きな支出があったのですが、それは一期間の売上原価(費用) とはならず、
減価償却という手続で、長期間にわたり分割計上されることが原因です。
設備投資により、資金収支がマイナスとなった状態です。 上記ニに該当します。
前述のとおり、資金収支と利益の間には、相違があります。
会社が継続して、発展・成長していくためには、利益を計上していかなければなりません。
しかし、企業活動における資金は人における血液と同様に、その存続に不可欠なものです。
黒字経営を続けていたにも関わらず、必要以上の設備投資を行ったことにより、資金繰りが 悪化し、
倒産するという【黒字倒産】の事例も少なくありません。
経営者としては、企業の利益を重視することだけではなく、資金収支の状況についても、 把握して
おくことが必要です。
W 目から鱗の決算書(参考編)
1.キャッシュフロー計算書について
月次の資金収支は、各月の損益計算書と貸借対照表の下段にも記載していますが、現金及び 預金の
増減として把握することができます。
この資金収支について、1月〜12月までを累計すると、
となります。
この資金収支を発生原因別に区分計算したものを【キャッシュフロー計算書】と呼びます。
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