T 名義預金って?
子や孫に財産を遺してあげたい。
そのような想いをお持ちの人は多いのではないかと思います。
しかし、安易に「贈与」と称して、子や孫の名義で預金を作るのは危険です。
相続税の税務調査では、子や孫の名義になっていても、その預金は子や孫のものではなく、子や孫の名義を借りているだけの「名義預金」として認定され、本来の所有者である人の預金とされることが多くあります。
つまり、「贈与」はなかったものとされるのです。
例えば、以下のような場合は、税務調査では100%の確率で「名義預金」と認定され、親の遺産とされます。
● 先日亡くなった親が、10年前に子名義で定期預金100万円を作成した。
● その資金は親が貯めたお金であった。
● 銀行印は親が使用していた印鑑と同じもので登録した。
● 親から子への贈与に関する契約書は作成した。
● 通帳と銀行印の管理は親が行っていた。
● 10年間、子が出金した記録はない。(親が使わせなかった。)
● 5年前に、親は自分の事業のためにその定期預金を解約して一時的にその資金を借り受けたが、その後再び子名義の100万円の定期預金を作成した。
U よくある誤解
相続・贈与に関するよくある誤解を列挙してみました。
この中には、噂として都市伝説のように信じられているものもありますが、信じると危険ですのでご注意ください。
なお、どこが誤りなのかをコメントしていますので、ご一緒に考えてみてください。
よくある誤解A
×子や孫の名義にした預金は私の財産ではないので、私が死んでも子や孫に相続税はかからない。
(誤っているポイント)
形式的に名義変更しただけでは「贈与が成立した」ことにはならないため、その預金は子や孫の財産にはなりません。
実質的に「贈与が成立した」というためには、子や孫がその預金を管理し、自分の意思でいつでも自由に使える状態になっていることが必要です。
よくある誤解B
×税金にも時効があるはずなので、10年以上前に亡父が私名義で作成してくれた定期預金については贈与税は課されない。
×それに定期預金は既に自分名義なので相続税も課されない。
(誤っているポイント)
確かに課税権は時効により消滅しますが、そもそも贈与が成立していないということであれば、贈与税の課税権などありません。
贈与が成立していないのであれば、その定期預金は亡父に帰属する相続財産となり、相続税が課されることになります。
よくある誤解C
×5年前に亡父が作成してくれた私名義の定額貯金については、私は最近まで知らなかったが、私の名前で贈与税の申告をしたそうなので私の固有財産である。
(誤っているポイント)
「贈与が成立した」から贈与税の申告納税義務が発生しただけで、贈与税の申告納税をしたから「贈与が成立した」ということではありません。
つまり、贈与税の申告は贈与の事実を証明するものではなく、「免罪符」にはならないということです。
よくある誤解D
×未成年である幼児には生前贈与はできない。
(誤っているポイント)
未成年に対しても生前贈与は可能です。
詳細はお問い合わせください。
よくある誤解E
×郵便局の貯金は表に出ないそうなので、相続税や贈与税の申告はしなくても大丈夫である。
(誤っているポイント)
さすがにこんなことをいう人は少なくなりましたが、大ウソです。
昭和の時代に、巷でまことしやかに囁かれていた都市伝説です。
V 名義預金と認定されないために
「名義預金」と認定されてしまうと、贈与はなかったものとされてしまいます。
そこで、どのように贈与すれば、そうならないのかを箇条書きでまとめてみました。
以下はどれかひとつ満たせばよいというものではなく、基本的にはすべて満たしておくことが望ましいと思います。
逆にいえば、以下のすべてを満たしている場合、「名義預金」と認定されることはないでしょう。
1.贈与契約書の作成
● 贈与契約(贈与日・贈与者・受贈者・贈与財産等)の内容を記載した書面を作成し、双方が署名押印してください。
● 必ずしも公正証書で作成する必要はないが、確定日付は取っておいたほうがよいでしょう。
2.贈与契約内容の履行
● 贈与者が受贈者の預金口座に振り込む方法により資金移動を行ってください。
● 受贈者の預金口座は受贈者の住所付近の金融機関のもの又は受贈者の生活で使用しているものが望ましいでしょう。
3.定期預金証書・通帳・カード・銀行届出印の管理
● 受贈者が上記すべてを管理してください。受贈者から依頼されても贈与者は管理を引き受けるべきではありません。
● 届出印は受贈者固有の印鑑とし、絶対に贈与者の印鑑とは区分してください。
● 届出住所は受贈者の現住所としてください。
4.使用収益権の移譲
● 贈与者は贈与した資金を絶対に使用してはいけません。
● 受贈者が実際に資金を出金して使用することまでは必要ありませんが、いつでも受贈者単独の判断で出金・解約ができる状態にあることが必要です。
5.贈与税の申告納付
● 暦年で1年間の受贈額が110万円以下の場合には、贈与税の申告納付は不要です。
● わざと110万円を超える贈与を行うことにより、贈与税申告納付の記録を残すことも一つの方法です。
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