2.利益と資金収支
設例の4月や11月は、それぞれ300円、1,150円の利益が出ているにも関わらず、
現金及び預金の残高は、前月と比較して、それぞれ1,300円、2,400円も減少しています。
逆に、8月は損失が発生しているにも関わらず、現金及び預金の残高は、前月よりも増加しています。
なぜ、このようなことが発生するのでしょうか?
現金及び預金の増減のことをカ【資金収支】といいますが、以下の算式で求められます。
● 資金収支 = 収入 − 支出
これに対し、利益は、以下の算式により計算されます。
● 利益 = 収益 − 費用
結論から言いますと、収入と収益は似ていますが同一ではなく、また、支出と費用も似ていますが
同一ではないことにより、それらを計算要素とする資金収支と利益は、相違するのです。
つまり、資金収支と利益の相違は、収入≒収益(収入≠収益)、支出≒費用(支出≠費用)を原因とするの
です。
具体的には、「収入と収益」、「支出と費用」 には以下の相違があります。
収入≠収益
イ 収入はないが、収益となるもの
◆掛による売上(売掛金の増加)・・・売上(収益)は発生しているが未収入
など
ロ 収入はあるが、収益とならないもの
◆売掛金の入金(売掛金の減少)・・・過去の売上(収益)に対する入金
◆借入による資金調達(借入金の増加)・・・収入はあるが、利益(儲け)の計算には無関係
など
支出≠費用
ハ 支出はないが、費用となるもの
◆掛による仕入(買掛金の増加)・・・仕入(費用)は発生しているが未支出
など
ニ 支出はあるが、費用とならないもの
◆買掛金の支払(買掛金の減少)・・・過去の仕入(費用)に対する支払
◆借入金の返済(借入金の減少)・・・支出はあるが、利益(儲け)の計算には無関係
など
これらを踏まえて、4月・8月・11月を見てみましょう。
4月 商品Bの代金の支出はあったのですが、まだ売れていない分については、売上原価 (費用)と
なっていないことが原因です。
不良在庫の増加により、資金収支が悪化した状態です。 上記ニに該当します。
8月 商品Bの処分により、取得原価相当額の売上原価(費用)が発生したのですが、支出は完了して
いることが原因です。
不良在庫の処分により、資金収支が改善した状態です。 上記ハに該当します。
11月 車両の購入という大きな支出があったのですが、それは一期間の売上原価(費用) とはならず、
減価償却という手続で、長期間にわたり分割計上されることが原因です。
設備投資により、資金収支がマイナスとなった状態です。 上記ニに該当します。
前述のとおり、資金収支と利益の間には、相違があります。
会社が継続して、発展・成長していくためには、利益を計上していかなければなりません。
しかし、企業活動における資金は人における血液と同様に、その存続に不可欠なものです。
黒字経営を続けていたにも関わらず、必要以上の設備投資を行ったことにより、資金繰りが 悪化し、
倒産するという【黒字倒産】の事例も少なくありません。
経営者としては、企業の利益を重視することだけではなく、資金収支の状況についても、 把握して
おくことが必要です。
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